2021年07月02日

【検証】副室へスチールウールを詰める意味はあるか? その3

ざっくり言うと、アルコールストーブの火力は燃焼時間が短い方が高く、長く燃えるヤツは弱いです。その意味で火力の強い方から順に

D: CHSスタイル気化ターボ
C: スチールウール横向き
B: スチールウール縦向き
A: ノーマル型

となります。スチールウール版はなぜか40cc時に逆転現象が起きていますが・・・。
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グラフにするとホント微々たる差ですね。この燃焼時間は点火時からのものですから、本燃焼している時間を割り出すと最大でも1分程度となりました。

A: ノーマル型         10分15秒 = 11分25秒−70秒
B: スチールウール縦向き    9分38秒 = 10分32秒−50秒
C: スチールウール横向き    9分13秒 = 10分11秒−48秒
D: CHSスタイル気化ターボ   9分14秒 = 10分00秒−36秒

火力がおよそ1割向上したというところでしょうか。この1割のために労力をつぎ込みますか?

最大火力時のジェットの大きさにさしたる差は見られません。だから1割程度の差しか生まれなかったんですけどね。
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それよりも面白い現象がスチールウール版 2 種(BとC)に見られました。
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燃焼終盤に差し掛かると、最大時より明らかにジェットが弱くなっています。主室内燃料が少なくなると、副室内の沸騰状態を維持して気化させるパワーが不足してくるようです。温度を維持しなければならない質量がスチールウールの分だけ増えているのですから当然かも知れません。

結論
オープンジェットの副室へスチールウールを詰めると、ノーマルとは少し違いがある。しかし詰める意味(差)はあっても意義(成果)は無いと私は思います。

CHSスタイルの気化ターボは、全高が低く副室の体積が大きいと効果を発揮しにくい。(だから本家CHSはフープ状の小さな副室にしているのです。さらに油面と内壁上端との距離が大きい方が良いのです。)


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2021年06月30日

【検証】副室へスチールウールを詰める意味はあるか? その2

副室の中身だけ変えたアルコールストーブを4個作って燃焼試験をしていきます。
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チェックしたのは 2 点
1. 点火から本燃焼に至るまでの起動時間
2. 点火から終了までの燃焼時間
(火力は燃焼時間の長短を見れば強弱の判断ができる)

これを燃料の量を変えて、それぞれ3回試験して平均値を出しました。
1. 10cc
2. 20cc
3. 30cc
4. 40cc

動画は 40cc のケースを撮影したものです。
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点火と同時にストップウォッチをスタート。
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起動時間。
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動画中でジェット炎が噴出し始める秒数と、テロップで入れている秒数が少し違います。テロップには3回の平均値を入れているからです。

起動時間についての考察
スチールウール版はノーマル版より確かに早くなっています。早くなっていますが入れた甲斐があったと言うほど劇的な向上を見せているわけではありません。この程度ならノーマル型の主室開口径を直径で数ミリ大きくすれば埋められてしまうくらいの差です。

またスチールウール版 2 種類の順序についての結果は、私の予測と異なりました。わずかですが縦方向を横方向版が上回る結果になっています。
しかし、これは繊維の方向性に起因するものではないと考えています。ご自身で製作してみれば理解できるはずですが、横方向版の方が詰め込んだスチールウール量が多いのです。つまり繊維間の密集度が上がって毛管現象がより発生しやすくなったのではないかと。厳密に詰め物の質量まで同一にすべきでした。(追試はやりません。)

CHSスタイル気化ターボ版は、ノーマル型の約半分の起動時間でした。私としてはあまり良くない成績だったと思います。全高を少し低めに作った影響です。この結果から、背が低めのオープンジェットにとってCHSスタイルの気化ターボ効果は限定的と言えると思います。

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2021年06月29日

【検証】副室へスチールウールを詰める意味はあるか? その1

極々一般的なオープンジェット/副室加圧型アルコールストーブの副室へ、気化促進目的でスチールウールやグラスウールを詰め込む作例を見かけることがあります。私自身10年くらい前に試しましたが、違いを感じられないと判断していました。その頃は工作精度が現在より低かったせいもあるかもしれませんが。

今回はスチールウールの有無以外をすべて同じ条件にして、きちんと検証してみようと思います。

なお、ペニーストーブ/単室加圧型に詰めるケースは検証できません。火だるまプレヒート次第で大きく結果が変わってしまうためです。誰かプレヒートの方法を均一にする術を知りませんか?
単室加圧はそもそも燃料全体を沸騰させなきゃ本燃焼に至らないので温度を上げなきゃならん内包物を増やすのはデメリットと思うし、本燃焼移行後もただ熱暴走しやすくしているだけなんじゃないかと考えてますけど。

さて、検証ストーブは次のとおり;
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A: 極々一般的な副室加圧型(内包物なし)
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B: スチールウールの繊維の方向を縦向きに詰めたもの
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C: スチールウールの繊維の方向を横向きに詰めたもの
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D: CHSスタイルの気化ターボ
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内壁は細缶を使って継ぎ目と隙間に違いが出ないようにしています。特定の太缶との組み合わせならぴったりフィットするんですよ。

BとCの違いはスチールウールの入れ方です。目的が気化促進ですから、繊維に沿ってアルコールが上へ昇りやすくなるんじゃないかと思ってB:縦方向版を作成しました。作業性ならC:横方向に詰めた方が断然簡単です。結果はちょっと予想と違ったんですが、その考察は後ほど。

D:CHSスタイルは単に比較用です。これも予測を下回ったんですがその考察も後ほど。

続きます。
posted by tetk at 14:01| Comment(0) |  アルコール沼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月27日

たまには木工

毎日アルミや銅の金工ばかりしていると、たまに無性に木工をやりたくなります。

3月頃にインスタグラムで見かけた@wooodwork_diyさんの画像に触発され、作ってみたのがランタンテーブル。


で、4月になっても熱冷めやらず作ってみたのがローテーブル。結果として、好きで愛用しているbyerの丸パクリになりました。


posted by tetk at 09:56| Comment(2) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月03日

炊飯に最適かも !? チムニー型アルコールストーブ

アルコールストーブの中で火力調整が一番しやすいのはチムニー型です。通気量をコントロールすれば弱火から強火まで連続可変できます。でも自作だと背が高くなりがちな欠点もありますね。それと調整機構の工作が複雑で、自作のハードルが高かったのも事実です。

工作が難しくて面倒な一例:


2021年2月現在入手可能な飲料缶とその組み合わせ方で、背を低く保ったまま40CCの燃料容量を確保。そして今まで五徳組み込み型の火力調整方法が大半だったのを、かなり簡易化することができました。湯沸かしに火力調整なんて要らないと思ってますが、飯炊きにはほしいですよね。

まずは全体像と燃焼を御覧くださいまし。


できるだけ使う工具を減らし、かつ、基本的には100円ショップで揃う工具で製作可能です。さらに面倒な寸法合わせの微調整が不要になるような缶の選択と加工方法を紹介しています。


ある意味私の代名詞的な火力ターボも入れてますが、炊飯量やクッカーサイズに合わせて使う使わないを決めてくださいな。アルコールストーブ自作の裾野が広がることを期待して公開します。コピー品の販売はマナー違反ですよ。
posted by tetk at 16:59| Comment(0) |  アルコール沼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月24日

アウトレットのお知らせ

受付終了しました

コイルジェット・アルコールストーブのアウトレット販売をします。
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(画像をクリックすると別ウィンドウで大きな画像が表示されます)

昨年販売した際に保証交換用として保管していたものになります。
ファインメッシュ五徳は付属しませんので、別途高さ9cm以上のものを用意してください。またアウトレット販売なので保証も付きません。メールでのQ&Aには対応させていただきます。

使用条件とか注意事項とか燃焼の様子などは動画を参照してください。


価格 :5000円 (クロネコ宅急便の送料を含む)
送金先:ゆうちょ銀行 または みずほ銀行

私のメールアドレスをご存じの方は直接連絡していただいてかまいません。ご存知なければコメント欄にて手を上げてください。メールアドレス欄は非公開設定になっています。折り返しこちらから連絡します。
posted by tetk at 14:45| Comment(12) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月17日

FREELIGHT BlastBurner をナット固定で作ってみた

FREELIGHTからリリースされているBlastBurnerは、数あるアルコールストーブの中でも異端児な存在です。パイプの固定に特殊な接着剤を採用しており、一般の人が真似て作ることはできません。高耐熱で有名なJBウェルドの耐熱限界も軽く超えてしまうからです。

内部構造や作り方を公開するわけにはいきませんが、パイプ固定をネジ止めにする方法で試作してみたものがこのストーブです。
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コイルジェットでもナット締めにすることで接着剤に頼らない製法を公開しましたが、BlastBurnerでも同じだということを示せたと思います。
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単にナット化するだけじゃ芸もないしつまらないので、ポットサポート組み込み型にしてみました。
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大きめに作ったこと、パイプがBlastBurnerよりだいぶ長くなったこと、ポットサポートを組み込んだこと(放熱器として作用する)などマスが大きくなってしまったので、本家よりだいぶ大人しい燃焼になっています。
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立ち上がりも予熱時間が長くなっています。起動性は後退してますが、逆に稼働時の安全マージンが大きいと言うこともできるでしょう。試してませんが風防条件も緩くできるかもしれません。
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製品化や市販の計画はありません。あっても製造したくないほど面倒くさいので。
posted by tetk at 09:28| Comment(6) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月24日

Road to Super Penny Stove その 3

今回もまたボツかと頭をよぎりましたが、そこは諦めの悪い私ですから、思いついた案は全部やってみなけりゃ気が済まない。たとえ失敗でも、"この方法はコレコレこういう理由でダメ"という経験が蓄積されるはず・・・そう考えられなきゃ長くアルコールストーブの研究なんてやってられませんよ(笑)

そこでトライしたのが、ストーブの中心部でなく周辺部で気化をさせ、燃料タンクの気化ガスを副室へ送り込まずに圧抜き孔から逃がす、という動作バージョン。

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この形の缶だとジェット炎の向きが横すぎるし、気化促進の仕組みをインストールするのが窮屈過ぎる。

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これもジェットが横向き傾向。缶底を反転させ予熱用プールのために中心部だけ元に戻すという凝った細工をしたけど、それは蛇足だったかも。

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太缶(直径66mm)とは気化の仕組みは異なるが、アイディア検証のために作ってみた細缶(直径53mm)バージョン。気化機構は太缶版の方が効果的。

着火はターボライターで 20 〜 30 秒炙ってやればOK。手持ちでも可能です。
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燃料全体が沸騰する必要なく本燃焼が始まるので、火だるま予熱からは大幅に進歩したと思う。
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圧抜き孔からの炎があるからペニーストーブのような"純トルネード"にはなっていないけど、バスタブ燃焼じゃない分かなりスッキリしたと思う。
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もちろん低温下でもちゃんと本燃焼する。気化機能を組み込んだトップ外周部さえ高温なら機能するのだ。
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加圧型アルコールストーブをカルデラコーンのような完全に覆ってしまう風防と決して組み合わせてはいけない。耐熱暴走性を確認するための実験の一コマ。ジェット炎も圧抜き孔の炎もかなり大きくなるが、何度実験しても暴走しなかった。かなり圧抜き孔が効いていることがわかった。
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今回の2ヶ月に及ぶトライアンドエラーで、一歩、夢のスーパーペニーストーブへ近づけたかなと思う。ただし、現在の最高到達点ではあるが、タンク内の気化ガスを圧抜き孔から放出させるという、ある意味"逃げ"の方法であることも確か。何かブレークスルーが欲しいな。

もう一回くらいジェット炎を調整した"見栄え"バージョンを作るかもしれないけど、機構的な進歩バージョンは数年先か一生無いか・・・。とりあえず現在の最高到達点と思って見てください。
posted by tetk at 08:32| Comment(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月17日

Road to Super Penny Stove その 2

ペニーストーブのような単室加圧型はもちろんのことオープンタイプの副室加圧型でも、投入した燃料全体の温度が充分上がらないと気化が始まりません。だから本燃焼までの時間がかかるわけです。

燃料全体を沸騰させることなく気化をスタートさせる。例えば気化ターボみたいな仕組みを取り入れれば、立ち上がりはほんの少しだけ早くなります。まあ労多くして功少なし(立ち上がりに関してって意味ね)の範疇ですけどね。
さらにストーブ全体の温度が上昇すると、気化ターボは必要量以上の気化ガスを発生させる悪しき仕組みに逆転してしまいます。別に言い方をすれば、気化ターボは熱暴走促進装置になってしまうのです。

この辺りが密閉型での安定稼働と起動時間短縮―――すなわち容易な予熱―――との相反する課題点だと考えています。

いろんなサイズや形状の缶を眺めて取っ替え引っ替え組み合わせてみて、最初に思いついたのは上下2気室の構造にして、上側を気化室として使おうというものでした。

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失敗だったアイディア

下気室の燃料をCFウィックで吸い上げ、上側の気化室で熱帰還ロッドに巻きつけます。ロッドの熱で気化させて上気室をガスで充満させようというアイディアでした。下気室で発生した圧力は、CFの隙間を経由して上気室から逃がせるかなと思ってたんです。

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試作の一部(中部を作り変えて試験したりしてるから実際は2〜3倍)――全部失敗作

まあ見事に失敗でした。希望的観測よりずっと起動に時間がかかる。目論見より気化量が少ない。あまり役に立たなかった気化ターボみたいなもんでした。そのほかにも上気室の容積による変化や上下隔壁に開けたCF用穴径とCFサイズによる変化もありました。かなりクリティカル。作り方によっては過加熱時に気化しきれないアルコールが液体のままジェット孔から溢れ出てくるケースもあったんですよ。熱帰還ロッドがあるせいでまさに熱暴走促進装置でもありました。
posted by tetk at 10:28| Comment(0) | Diary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月16日

Road to Super Penny Stove その 1

コイルジェット・アルコールストーブの部材到着を待つ間に動画だけはなんとか編集してアップしましたが、ブログ記事が手つかずでした。トライ自体は3月に終わってたんですけどねえ。

ここから本題。

かれこれ 8 年も前の話ですが、密閉加圧式アルコールストーブの火達磨予熱をなんとかできないかと模索し始めました。RINNGOプロジェクトなんて称してましたね。

その後に開放型で給油の楽なウィック/パイプジェットを活用して、Petal Stove、Hoop Stove、CHSへと続いていきます。

一貫してトルネードにこだわり続けてますけど、バスタブ燃焼がある開放型のCHS系の炎の形が、密閉単室加圧型であるペニーストーブ(給油口をペニー硬貨で塞ぐことからこう呼ばれる)で作るトルネードには決して勝てない・・・と思ってます。純粋にジェット噴出だけで作られるトルネードはとにかくキレイなんですよ。だからバスタブ燃焼を"無駄燃え"なんて呼んだりしちゃうんですけど。
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密閉単室加圧型のキレイな炎

ただペニーストーブを使うには火達磨予熱を避けて通れない。内部のアルコール燃料全体が沸騰して(厳密にはそれに近い温度に到達して)気化が始まり、それがジェット炎となって噴出し始め、以降は自分の出す炎(と輻射熱など)で自分自身を熱し続ける・・・というのが動作原理であり、燃料温度を上昇させるためにどうしても外部熱源が必要になるのです。
多くの人がペニーストーブの周りにアルコールを垂らしてストーブごと炎上させるという予熱方法を使っているでしょうね。危険だしテント内では決して使えない。もちろん木製テーブルの上じゃご法度。スマートな人は、予熱用下皿を組み込んだり、外周にガラスファイバーやカーボンロープを巻いて使い勝手を改善しているでしょうが、まるごと火達磨にすることに違いはないですね。
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密閉単室加圧型の火達磨予熱

もちろん予熱過多でも、調理中の過加熱による熱暴走という危険もはらんでいます。
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過加熱で発生する熱暴走ーこの画像はまだ軽い方です

普通は炎の形なんて気にせず使い勝手だけでオープンタイプに走るんでしょうけど、ワタクシ的には形に拘りたいので・・・そもそもアルコールストーブにハマったきっかけが、穴が 1 mmズレただけで燃焼が変わるところが面白くて探求始めちゃったくらいなので・・・。

容易で安全な着火とキレイな炎の両立・・・永遠のテーマです。

つづく
posted by tetk at 09:17| Comment(0) |  アルコール沼 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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