名品 Noall Mountaineer II ・・・と言っても知ってる人なんてほとんどいないでしょうね(笑) Noallはアメリカ・カリフォルニアをベースにする知る人ぞ知るブランドでした。
HP から blog になり、そして最近の SNS の傾向なんだと思いますが、掘り下げた記事ってなかなか見かけなくなりました。WEB メディアなんて他人の写真と文章の上っ面をなぞっただけだし(笑)。ここは世の風潮に逆らって Noall を解説していきたいと思います。よく moss を称して「レア」なんて言う人がいますけど、世に出たタマ数で言えば数桁の差があるハズ。moss は日本へ正規輸入されていたし、なんたってあの
REI や有名ショップでずっと販売されてました。そのうえブームでアメリカから大挙して中古品も流れ込んで来てるし、今やありふれたブランドの一つですね。
一方の Noall は Noall ブランドとして日本へ入って来ていません。さらに 1994 年から 2000 年のわずか 6 年程度と短命な上、アメリカでもほとんど流通に乗っていませんでした。これぞまさしく
激レア。
そんな Noall のビジネスは、スティーブ・ノールとあのウェイン・
グレゴリーが旧友だったことにはじまります。80年代前半にブレーサブル(通気性がある)生地でテストを重ね、生地に通気性を持たすより換気性能を高めた方がより有効に働くという結論を得ます。さらに PU コーティング面を moss のように外側にした方が、室内が結露しにくく、かつ、外側の水滴も流れ落ちやすいという結果も得ています(ちなみに Noall のダブルウォール・モデルは内コーティング)。こうしたテストをウェインと一緒にやってたということなんですね。
( moss がずっと前からやっていた外コーティングの有効性を証明した? moss lover としてはちょっと鼻が高い。)こんな経験を踏まえて 1980 年代末期にリリースされたテントは、基本的に
Gregory の縫製工場でバックパックと一緒に製造されていました。販売も Gregory ブランドで行われ、日本にも 94 年頃まで
A&F 経由で輸入されていたんです。なんと moss 並の高価さだったんですよ。まあ為替レートの関係で仕方ないんでしょうけどね。
当時のA&Fの広告
その頃の Gregory Mountaineer II を私の友人が持っていて、
ここにその詳細を載せています。
Gregory Mountaineer IIところが 83 年に Gregory が
Bianchi International(自転車とは無関係の会社)に買収され、徐々にスティーブが離れていって、1994 年に Gregory ブランドから Noall ブランドに変わります。時期が悪かったんでしょうね。アウトドア業界がかなり辛かった頃ですし、ネット通販も花開く前でしたし・・・2000 年に WEB サイトもいつの間にか消えてなくなったそうです。
Gregory 版の Mountaineer II を見た時、テントとしての基本性能、居住性、使い勝手、デキの良さを充分感じました。陽に映えるターコイズ系の色もきれいでした。でも秋冬や夜に寒々しく感じてしまうんですよ。そこで色違いの Noall 版です。
やっぱりタン色が好きなんだな〜。フロアやバイアステープの青緑色も落ち着いている。ちなみにこの色の組み合わせはコイツ以外見たことがない。
ホント
よく考えてあるし、実際よく出来てる。サイズ的には
moss の stardome を思い浮かべてもらえればイメージしやすいと思いますが、使い勝手に限って言えば stardome より
数段上を行ってます。
stardome のセンターポールを斜めがけに変えた感じ● ポールスリーブに伸びるメッシュ素材を使ったきれいなアーチ
● 浸水しにくいバスタブ式フロア
● 使いやすい外メッシュでく開け方のバリエーションも豊富
● 換気によく効く大きなベンチレーション
● 出入りしやすい大きなドア
● スリーブとフックを併用した容易な設営
● イーストンポール
3kg 後半の重さと収納サイズは 80〜90 年代そのもの。オールシーズン用ですしね。
この時代のテントに入ると何故か安心感があります。私だけかな?
良いところだけでなく、気に入らないところも挙げておきましょう。
魚座型ポールワークの交差する箇所が下へ下へと移動して、交差の下側が横へ広がる。そのため特に地面から立ち上がった辺りの本体とフライシートの隙間が無いに等しい。せっかく本体下側に設けた換気メッシュもフライをかけた途端に効かなくなる。ポールの交差箇所をヒモで縛って上の方へ固定しておくと少しだけ改善可能。
本体の同じ場所、フロアの短辺に当たるところの壁が見た目より寝ている。そのため 15〜20cm のデッドスペースとなり、データ上の全長より有効長が削られてしまう。そこへ物を置いたりするとフライシートまで届いてしまって結露の原因にもなる。
フライシートが本体と連結式でなく、ハトメにペグダウンする方式。本体 6 本、フライ 6 本のペグが必要。フック状のピンペグなら、本体を固定したペグに引っ掛けて固定することも可( 6 本で済む)。
全体としてまさしく私が好きな
80 年代後半から 90 年代前半のテントそのものです。当時メインストリームだったテントの良い所を全部放り込んで、さらにブラッシュアップした感じ。その上で
徹底した結露対策を盛り込もうとした、意欲的で優れた 4 季用モデルだと思います。いや〜、なかなか気に入りましたよ。