
私は"カウチクライマー"です。山岳小説、登攀記や生還劇などを読んで、あたかも自分で登ったような気になってます。"カウチ"は言い過ぎかな(笑)。たいてい通勤電車の中か、退社後に喫茶店で読みふけることが多いですし、家にそもそもソファなんてハイソな家具はありません。
山行き前は、最近の様子を知りたくていろいろ検索して情報収集するのですが、先日の南ア仙塩尾根コースを探している時に、両俣小屋から集団で避難した記録があることを知りました。読んでみたくて、本屋、amazon、さいたま市の図書館を当たってみたものの入手不可能。検索の結果、山梨県立図書館に蔵書されていることがわかりました。ダメ元でさいたま市の図書館に取り寄せを依頼して、ようやく読むことができたんです。
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久しぶりに一気読みしてしまいました。1982年と言えば、自分がまだ南アと中アに挟まれた飯田市に住んでいて、山を始める前のことです。でも、台風で全通したばかりの中央道が土砂崩れで通行止めになった記憶がかすかに残っています。さらについ先日見た小屋での出来事ですし、一部だけど避難経路も歩いたし、仙丈ケ岳山頂で大型台風直撃に遭ったこともあるし、ヒマラヤやアルプスを舞台にした他の話よりも、ずっとずっと身近に感じました。
小屋番さん(著者でもあり現役の両俣小屋管理人さん)の自責の念を記した文章に「誰も悪くないのに・・・」と涙したり、助け合うワンゲル魂に感動したり・・・。登場されるワンゲルの方は私と同年から2-3歳上の人たちですが、あんなルートをあんな天候の中をずぶ濡れになりながら避難した苦難とか、登山靴も無しで脱出を逐行した女の子や仲間の精神力とかがダイレクトに伝わってきました。
私は独自・独学・見よう見まねで登ってるだけで、ワンゲル部も山岳会の経験もありません。巷では大学山岳部/ワンゲル部の衰退が言われているそうですが、41人の嵐に登場してくるような部なら参加したかったかもと思いました。彼らの一人でも欠けていたら、全員無事とはいかなかったような気がしますから。
おそらく自費出版の郷土史的文献なので入手難だと思いますが、南アが好きな人とかワンゲル関係者の方は是非ご一読をと思う一冊でした。