2009年09月13日

スリルの三峰岳(みぶだけ)2,999m

一度歩いてみたいと思っていた尾根へ2泊3日の予定で出発。予定していたコースを全部歩くことはできましたが、2日目の悪天で泊まることをやめて1泊で下山してきました。ちょっと強行軍だったかな。

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赤線が徒歩
オレンジがバス/タクシー

当初計画(左回り)
1日目 芦安駐車場−(バス)−広河原−(バス)−野呂川出会−両俣小屋
2日目 両俣小屋−野呂川越−三峰岳−間ノ岳−北岳山荘
3日目 北岳山荘−北岳−北岳肩の小屋−右俣コース−広河原

実際の行程(右回り)

1日目 芦安駐車場−(タクシー)−広河原−右俣コース−北岳肩の小屋−北岳−北岳山荘
2日目 北岳山荘−間ノ岳−三峰岳−野呂川越−両俣小屋−野呂川出会−(バス)−広河原−(タクシー)−芦安駐車場

1日目 9月11日
仕事の都合で3連休になり、1泊だと行きにくい場所で前から歩いてみたいと思っていた尾根へ行くことにしました。しかし平日の金曜だと芦安から広河原へ入る登山バスが 07:40 までありません。それで仕方なく左回りコースにして、1日目は両俣小屋で泊まって2日目に仙塩尾根経由で北岳まで行く計画にしてました。

05:10 芦安駐車場
朝4時過ぎに芦安駐車場に着くとタクシーが 05:10 に出るとのこと。一瞬迷いましたが翌日の天気予報もあまり良くないし、1日目で距離を稼いでしまった方がいいだろうと思って計画の逆ルートを決定して広河原へ入りました。結果的にはこれが良かった気がします。計画どおりだったら2日目に途中で引き返して来たと思いますから。

06:30 広河原(1,529m)
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昔のアルペンプラザがあった場所に、建築中の新アルペンプラザの骨格ができていました。来年あたりに完成するんでしょうかね。でも野呂川の河原には重機が入って見るも無残な様子です。広河原周辺の釣はダメでしょう。朝一のタクシーで入った人は総勢40-50人程度でしょうか。広河原山荘の前で身支度を整え出発します。

登り始めて1時間、大樺沢の右岸へ渡る橋の所で休憩。デジカメにフィルタを装着して撮ってみました。
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もう一枚。
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ここからの登山道は大樺沢の右岸を通ります。数年前に左岸側崩落で付け替えられた新道ですが、踏まれてようやく安定して歩きやすくなった気がします。

08:40 二俣(2,209m)
二俣手前で少し足がプルプルします(泣)。当初の計画だときょうは林道を3時間歩くだけだったので、CWXをはいてなかったんですね。失敗でした。恐るべしCWX(笑)。
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今回は右俣コースを取ります。北岳へ至るコースでは一番やさしいとされるルートですが、やっぱり北岳はどこから登ってもキツイですね。

バットレスへ向かった方もいました。きょうは気持ち良くクライミングできたでしょうね。
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10:00 いつもの休憩地点
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二俣を出た直後が一番の急登です。それをなんとかやっつけると開けたポイントにでます。ここを過ぎる頃まで立ち止まると虫が集って来てオチオチ休憩もできません。刺さないだけマシなんですけどね。

10:55 草スベリのコースとの分岐
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ここを過ぎると樹木も一気に背が低くなって、高いところまでやってきた実感が湧いてきます。

11:10 小太郎尾根分岐(2,800m)
稜線に出ると風が強くて一気に汗が引きます。ここからの景色は何度見ても素晴らしいですね。八ヶ岳や穂高も見えていました。

鳳凰三山(中央が観音岳)
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甲斐駒ケ岳
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仙丈ケ岳
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12:00 北岳肩の小屋(3,000m)
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13:00 北岳(3,193.2m)
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北岳の標高が 1m 高くなりました。三角点は 3,192m でしたが、そこより少し離れた場所の岩盤を再計測したら、3,193.2m だったそうで、看板も標高が上書きされてます。詳しくはコチラ。雷鳥も山頂に姿を現してくれました。

14:20 北岳山荘(2,890m)
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いい時間帯に到着できました。金曜だと空いてますね。テントも10張り強だけです。
もう何回か使ってみないと真価がわからないだろうなと思って、テントは前回に引き続き Fly Creek UL1 です。高山帯で使うには、フロアのラインを長くして、ペグでなく石で固定できるようにしておいた方が良いと思います。一般的な登山用テントの倍は設営に時間がかかるのも覚悟しないといけないですね。これも軽さの代償かもしれません。その代わり畳まなくてもスタッフバッグへ詰め込むだけで済む撤収は楽チンです。

2日目 9月12日
腕時計のアラームを10分おきに3回鳴るようにしておいたのに、気付いたのは全部鳴り終ってさらに10分経過した後でした。1時間おきに目が覚めるのに、いつも目覚ましに気付かないんですよね(笑)。
外はガスの中。珈琲を飲んでいると小雨・・・。どうしようかと思いつつ撤収していると、雨は止んで明るくなってきたので出発します。

06:30 北岳山荘
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本当のところどうなのか知りませんが、きのう途中からいっしょに歩いた人の話によると、北岳山荘から農鳥に至る稜線が、日本で一番長く歩ける3,000m超のコースだそうです。

07:00 中白根山(3,055m)
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横風の強い稜線上を歩いて中白根に到着。ここからは本日のハイライトである間ノ岳から三峰岳へ至る尾根が一望できます。
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08:00 間ノ岳(3189.3m)
7時半頃から雨が混じってきました。間ノ岳山頂では何も見えません。風がますます強く吹き、途中でザックカバーを飛ばされた人もいました。
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今回の本命で、楽しみにしていた間ノ岳−三峰岳稜線は、すっかりスリルとサスペンスの行程(笑)となってしまいました。絶え間なく南から吹き付ける強風は、風速20mを軽く超えていたと思います。何度も身体ごと持って行かれそうになるし、険しいルートに濡れた岩で、常に緊張が強いられます。視界も 30m から 50m 程度で、一度ルートを間違えました。晴れていれば何のことはない場所だったんですけどねえ。三峰岳に到着するまでの間で、雷鳥を見かけた時が、唯一ホッとした瞬間でした。自分にとって雷鳥さんは、心細くなったときに現れて、励ましてくれる存在です。

08:50 三峰岳(2,999m)
間ノ岳からずっと下ってきて、最後にちょっと登り返すと岩稜の三峰岳山頂です。
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長いアプローチの末にようやく到達できる山頂は何も見えません(泣)
日本に3,000m峰は番外を除けば 21座(西農鳥や中白根などが含まれない)あるそうですが、たった 1m 足りずに漏れてしまって、300名山にも入れてもらえないようなちっぽけな"通過点"かもしれません。でも、自分の腰とか腹のあたりが3,000mちょうどなんだなあと実感できるし、山梨県・長野県・静岡県の3県の境界点でもあるし、長大な仙塩尾根の真ん中に位置して、かつ、最高地点でもあるんですよね。同じ 2,999m の北ア剱岳があれほど注目されるのは登攀の難しさから来るものなんでしょうけど、三峰岳にスポットライトが当たることはありませんね。間ノ岳への吊り尾根があるせいで、白峰三山からみるとただの小ピークに見えてしまうからなのでしょうか。今回下りに使った両俣−仙塩尾根ルートで登ったら、きっとお腹いっぱい充実感いっぱいの名山になると思います。

ここから白峰三山の景色と塩見岳への展望を楽しみたかったんですけどね・・・。また課題が残ってしまいました(再度行く言い訳です)。
名残惜しいけど天気が天気なだけに、09:05 遭難する前に下山を開始します。
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11:30 野呂川越(2,300m)
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下山開始15分後に、またしても道をロストしました。ハイマツに隠れてわからなかったんですよね。この時は鹿の足跡で救われました。三峰岳直下はなかなか厳しい急降下です。

森林限界を下回ったところで熊鈴を取り出し、ストックにぶら下げてカンカンキンキン盛んに鳴らしながら下ります。両神山がトラウマになってるんですよねー・・・ザックに付けたままじゃあまり音が出ないんで。

地図では独標があることになってるんですが、さっぱりわかりませんでした。途中何箇所かテントが張れそうな場所を確認しながら(仙丈ケ岳からの縦走を目論んでるので)、延々と続く樹林帯を下ります。倒木が多いルートでしたが、通過に支障が出るようなものはありません。まさに深山という雰囲気を持ってますね。

野呂川越直前で、間ノ岳を出てから初めて人に出会いました。久しぶりの"人間"なんで、ひとしきり情報を交換します。その人は野呂川越にザックをデポして三峰岳を目指し、戻って仙塩尾根を仙丈ケ岳方面へ向かって途中でテント泊(ビバーク)をする予定だそうです。こちらからは上の登山道と風の様子を伝えました。

12:20 両俣小屋(2,010m)
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雨も降り続いているし、小屋に着いてからお昼にしようと思って両俣小屋まで下りてきました。雨風を防げるように運動会で使うようなテントを用意してくれていて、きょうみたいな天気だとホントありがたいですね。しかし、到着したときにまさに出発しようとしていた Fly Fisher さんたちが最終のバスで下山するというのを聞いて、こんな雨だし明朝もどうなるかわからないし、下山できるなら帰ってしまおうと昼食抜き決定。朝、クリームパンを1個食べただけで、芦安まで戻ることになりました。

14:30 野呂川出合(1,780m)
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古い地図では上り4時間下り3時間。その通りだったら間に合わない可能性もあるので、疲れた身体に鞭打って林道を急ぎます。
昔は両俣小屋まで林道が通じていたのでしょうが、斜面が崩れて埋まったり、野呂川にさらわれて崩壊している箇所がいくつもありました。崩落を防ぐ法面工事がされている所が何箇所も工事の意味なく崩れていたり、自然の力の大きさに怖さを感じます。復旧工事している所もありますが、費用対効果を考えると(特に土建関係にメスを入れようとしている民主党政権だと)、このままでもいいような気がします。秘境は秘境のままでいいんじゃないでしょうかね。

次のバス(最終バス)まで1時間10分も、徐々に強くなる雨足に加えて雷まで鳴る中待っていたら、すっかり凍えてしまいました。林道工事費用の何千分の一の費用で済むんだから、バス停に屋根を作ってもらいたいものです。バスが来たときはホント助かったと思いましたよ。
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16:40 芦安駐車場
広河原で土砂降りの中、南アルプス市営バスからタクシーへ直行。無事下山を果たしました。あんな雨の中テント泊しなくて良かった(軟弱)。

ラベル:登山 南ア
posted by tetk at 18:38| Comment(4) | TrackBack(0) | 山行系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
天候急変の厳しさ、熊、進路を塞ぐ木々など
登山は、自然の厳しさが半端じゃないですね〜

それでも行きたくなるのは
登頂の達成感、山頂で見る広大な景色なんでしょうね。
一度経験してみたいですが、
難しそう^^;
Posted by takapon at 2009年09月14日 17:02
takaponさん
私は森林限界を超えたところの尾根歩きが好きなんですよ。
そよ風が下から吹き上げてきて反対側に下っていく感覚がタマリマセン。

行くのは「明るい中高年登山」コースばかりですから、無理と失敗さえしなけりゃ大丈夫ですよ。
Posted by tetk at 2009年09月14日 20:15
ナイス判断です!

引き返すのも勇気が要りますが、無理しないで安全に帰って来る事が一番ですよね。

CW-X私も愛用していますが・・・忘れないようにしなきゃ。





Posted by Drake at 2009年09月14日 21:35
Drakeさん
ハイ、CWXは偉大です。
そうそう、Fisherさんたち、嫌ってなるくらい出たっ!って言ってましたよ!
Posted by tetk at 2009年09月14日 21:40
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